Center’s Note

高等教育研修センターでの挑戦

2024年7月8日
立花 優(FD部門副部門長)

北海道大学大学院教育推進機構特任講師の立花 優(たちばな ゆう)です。この投稿では高等教育研修センターでの私のこれまでの仕事、研究・教育活動について紹介したいと思います。

高等教育研修センターでの仕事・役割

2016年に高等教育研修センターラーニングサポート部門(LS部門、ラーニングサポート室)に着任、2020年度の途中からファカルティ・ディベロップメント部門(FD部門)の業務も兼担するようになり、2021年度からはFD部門の業務に専念しています。2022年度よりFD部門の副部門長を務めています。
前任のラーニングサポート室では、学生アンケートの集計分析や教務関係会議への情報提供業務を担当しつつ、学生の修学設計に関する相談に対応してきました。また、主にレポート執筆に関してセミナーや個別形式での学習支援を行い、本学の倫理教育教材「引用の仕方-不正と言われないために」の作成にも携わりました。FD部門では教職員を対象とした研修の企画・運営、部門業務の統括を行っています。

新しい/面白いこと・ものを探す、試す

「好きなこと、趣味」について話すとき、最近はこのように答えることが多いです。 高等教育研修センターでの業務は、「新しい/面白いこと・ものを探す、試す」機会を豊富に提供してくれます。この環境を生かし、私は現場で得られる情報を手掛かりとして、大学での学びをいかにバージョンアップできるか、ICTや生成AIなどの新しいもの・ことを授業・研究・業務にいかに活用していけるかを常に考え、動いてきました。

LS部門では、頻出相談事例をベースとしたチャットボット型相談対応サービス「ラーサポくんに聞いてみよう!」を企画し、学生を組織して実装しました。また、コロナ禍初年の7月には、学生から寄せられた相談をきっかけに北大1年生を対象とした「授業課題に関する調査」を企画・実施しました。この調査については、高等教育研修センター主催の研修「withコロナ時代の大学教育をどう創っていくか」のほか、国立情報学研究所の大学等におけるオンライン教育とデジタル変革に関するサイバーシンポジウム「教育機関DXシンポ」で報告を行いました(「北海道大学学部1年生を対象とした授業課題に関する調査について」)。

FD部門では、オンライン授業に対する本学の学生・教員双方の意識をつかむべく「オンライン授業に関するアンケート」を企画・実施し、講演会形式の研修で情報提供を行いました(「ハイブリッド授業の質をどう高めていくか〜学生,教員アンケートの結果を基に考える〜」「オンライン授業の今後をどう展望するか~学生,教員アンケートの結果を基に考える~」)。 オンライン授業に関しては、受講者が対面・オンライン両方で受講できる「ハイフレックス型」が注目されましたが、授業担当教員の負担が重いことがネックでした。そこで、ハイフレックス型授業の支援専用のTAを育成し、必要機材とともに派遣する試験事業を企画・実施しました(「ハイフレックス型授業の可能性を探る」)。

副部門長として、FD部門のDXにも関心を持っています。この春からクラウド型情報ツール「Notion」を使った業務管理体制を構築し、運用しています。詳しくはCenter's Note「Notionを業務で活用する:高等教育研修センターのDX」をご覧ください。
目下対応の必要性を強く感じているのは、生成AIについてです。2023年度前期には本学学生を対象にアンケートを実施して利用状況を調査し、その分析をもとに本学教員を対象としたワークショップ型研修「授業の現場でChatGPTに備えよう」を実施しました。生成AIという全く新しい技術と学生との幸福な出会いを、大学教育の場でどう演出できるのか。学習や教育、研究の姿を大きく変える可能性がある生成AIへの対応は、FDとしても大きな、魅力的な挑戦だと感じています。

教育活動

初年次生向けに少人数の演習授業「アカデミック・ライティングの基礎を学ぼう」を担当しています。この授業は後期開講で、各受講生が前期のいずれかの授業で作成したレポートをレクチャーに沿って再校正する作業を通じて、学術的文章の書き方・読み方・探し方・使い方の基礎を学んでもらうことを目的としています。また、学びの成果を形にするためのグループワークを行い、進級後に自身で文章の質を向上していけるような道筋づくりを心がけています。
「後生畏るべし 焉んぞ来者の今に如かざるを知らんや」という言葉を常に心に留めながら、12年の「勉強」から大学での「学問」へと、初年次生の学びのスタイルの転換をうまくアシストできるような授業を目指しています。

本務と研究の両立

私はもともとコーカサス地域(アゼルバイジャン、アルメニア、ジョージア(グルジア))の現代政治や、旧ソ連地域の紛争の一つナゴルノ・カラバフ紛争について研究してきました。現在も高等教育研修センターでの業務と並行して研究を続けています。いわば本務と研究の2つのチャンネルを持っているわけで、この2つのチャンネルを維持するのは大変ですが、大学と、そこに集う人々を多角的にとらえられることは大きな刺激であり、喜びでもあります。
(活動実績についてはhttps://researchmap.jp/tachibana_yu

ジョージア・トビリシ市の野外民族学博物館にて。ここにはジョージア各地の伝統家屋が集められ、見学することができます。

近く10周年を迎える北海道大学高等教育研修センターから、FDと研究、教育それぞれにおける挑戦を通じて大学での学びの再デザインを考え、積極的に発信していきたいと考えています。