高等教育研修センター開設10年
2025年4月1日
副センター長 山本 堅一
始まりは一人でした
本学に高等教育研修センターが設置されたのは2015年4月1日です。昨年度で丸10年の活動を終えました。このような大学の附置センターが、10年間、大きな改組もなく、名前も変えずに続いたのは素晴らしいことだと思います。10年間も続いている大きな理由の一つは、学内外の皆さんに利用されているからでしょう。
私が2015年4月に着任した時、専任スタッフは私しかいませんでした。それでも初年度から少しずつ成果を上げ、少しずつ知名度を高めていきました。10年前といえば、FDのイメージは今よりも良くありません。極端に言えば、年に1回程度強制的に受けさせられる意味のないもの、というイメージを持っていた教員もいたことでしょう。
そこで、FDに参加することへのハードルを下げることを目標にさまざまな活動を展開してきました。おかげさまで、本当に多くの方に研修にご参加いただいています。当センターでは、当初から研修参加者のデータベースを構築しており、誰がいつどの研修に参加したかすべて記録しています。それらのデータは定期的に整理し、ポスターという形で発表してきました(2018年度、2019年度、2023年度)。
当センターの研修は、基本的に学外にも開放しています。北海道地区の大学にはFDの専門家がいないところが多いためです。研修参加者の割合は、学内と学外が半々程度で推移しており、この点は当センターの自慢の一つになっています。学外者の利用はもちろん嬉しいことですが、学内から利用されることが最も嬉しいです。コロナ禍以降ウェビナーが増えてきたことで、北海道外からも参加しやすくなり、多少バランスは変わってきましたが、それでも学内参加者は依然として多いです。
当初一人だったFD部門は、今では教員4名、事務補助員5名まで増えました。大学に活動の重要性を認識され、予算をいただけたおかげです。とはいえ、大学の規模に比べてまだ十分なスタッフ数だとは思っていません。毎年度、研修だけでも40回以上実施しています。それはもう毎日大忙しです。
なぜFDが必要なのか
大学教育も初等中等教育同様、組織的な教育でなければ十分な学修成果を上げることはできません。そのためには、大学教員は教育について学ぶ必要があります。一度学べば良いというものばかりではありません。教育の潮流は変化するからです。最近でいえば、アクティブラーニングと生成AIの登場は大きなインパクトをもたらしました。アクティブラーニングの登場により、教育のパラダイム転換(教師中心から学習者中心へ)が起こりました。その転換がまだ行き渡っていない中、今度は生成AIの登場です。また、入ってくる大学生も年代と共に変わってきますので、大学生に関する情報も常に学ぶ必要があります。合理的配慮、コロナ世代、デジタルネイティブ世代、生成AI世代などです。このように、大学教育に携わる以上、私たちは常に学び続ける必要があります。そういった学びがFDというものです。学び方は人それぞれで良いと思います。書籍から学ぶ人や、最近では動画で学ぶ人もいることでしょう。当センターが提供しているのは、主に研修による集団での学びになります。すなわち、専門家によるワークショップや講演会などを通じて、他の参加者と学び合っていただく機会を提供しています。自分一人で学びたいという人に強制するわけではありませんが、やはり一人でも多くの方に研修に参加して欲しいと考えています。年間40回以上の研修を行う理由がここにあります。
大学教員の多くは、研究により多くの時間を使いたいものです。大学の運営業務や社会貢献もあり、本当に忙しい教員が研修を受けられるようにするには、何度もやるしかありません。都合のつく時に研修に参加していただいて、教育における悩みを少しでも軽減して欲しいと願っています。
また、最近の大学は常に新しい教育プログラムなどを作っています。時代に合わせてさまざまな手法で学生を教育しようとする試みは、素晴らしいことだと思います。しかし、そのプログラムを担当する教員の授業力がなければ、学生のためにはなりません。「大学の授業は難しいけど楽しい」「毎日授業が楽しみだ」、私の大学には、こんな大学生ばかりだと言える人はどれくらいいるでしょう。教員個々人の授業力向上こそ、FDの最も基本で最も重要なことだと私は考えています。
学生には、在学中に授業以外でもさまざまなことを学んで欲しいものですが、最も多く時間を費やすのは授業になります。大学卒業後、この大学で学べて良かった、ここでの学びが自分を成長させてくれたと思ってもらうことは、母校愛につながり、同窓会の活性化にもつながると思います。卒業生が社会で活躍した暁には、大学への寄付も期待できるのではないでしょうか。
これからの高等教育研修センター
ここまでの10年、当センターは研修受講文化の普及に力を入れてきました。これまでの受講者データを見ると、その目標は一定程度果たせたものと考えています。次の10年は、もっと個人に寄り添った支援を拡大していきます。今の大学教員は、あまりにも忙しすぎます。教員のウェルビーイングを大切にし、時間を有効に使って教育研究活動をしながら、学生の学修成果をしっかり向上させる、そんな大学になるよう、センターとして支援できれば良いなと思います。今後の方針等については、改めて皆さまにご説明したいと考えています。
これまでさまざまな形で当センターを関わっていただいた皆さまに対しては、心より感謝申し上げます。引き続き、お付き合いいただけますようよろしくお願いします。今年度は、8月21日(木)に10周年記念イベントを開催します。ノベルティグッズもたくさん用意していますので、皆さまのご参加をお待ちしています。詳細につきましては、追ってお知らせいたします。気になる方は、当センターのメールマガジンにご登録いただけますと、情報をいち早くお届けできます。