高等教育研修センターがわかる10年のデータ
2025年11月4日
副センター長 山本 堅一
この度、「高等教育研修センターがわかるデータ」シリーズの第4弾を制作しました。これまで、「11のデータ」2018年、「11のデータ」2019年、「10のデータ」2023年を出してきました。今回は、高等教育研修センター開設10周年を記念して、10年分のデータを12の項目に整理し「10年のデータ」として制作しました。是非こちらからパンフレットをダウンロードいただき、下の解説とあわせてご覧ください。
1.年代
研修参加者の年代を見ると、日本の大学教員の年齢構成と近いことがわかります。

2.性別
教員に占める女性の割合は、大学では27.2%しかありません(令和5年度学校基本統計より)。それに比べると、女性の参加割合は高いことがわかります。要因の一つに挙げられるのは、医療系、特に看護系教員の参加が多いという点です。看護系の先生は女性が多いため、女性教員の研修参加率が高くなっていると考えられます。
※受講アンケートの結果を基に算出しています。

3.研修参加者の満足度
研修の満足度は概ね高い傾向にあります。コロナ禍をきっかけに遠隔研修が増えました。現在は、講演会形式の研修はウェビナー、ワークショップ形式は対面を原則として実施しています。対面研修の満足度と遠隔研修の満足度を比較すると、対面研修の方が満足度は高くなります。2024年度は、対面研修が平均で4.63、遠隔研修は4.32となっています(5件法)。

4.参加者の行動変容
研修の効果測定は容易ではありません。私たちのセンターでは、研修受講後のアンケートにて行動変容の可能性について尋ねています。たとえ研修内容が理解できた、勉強になったとしても、それを自身の行動変容につなげられるかは別問題です。したがって、満足度よりも行動変容の可能性の方が、平均値は低くなっています。
当センターでは、2025年度からフォローアップ研修を始めました。特定の研修を受講した方に対するフォローアップの研修です。研修の受講者が再び集まり、研修で学んだ内容を反映できているか、課題は何か等を共有し、さらなる行動変容へとつなげるきっかけにしていただきます。

5.研修カテゴリごとの実施回数
まとめてみると、最も多く実施した研修領域はコミュニケーションでした。当センターでは、コミュニケーション研修を重視しています。大学は、教員、事務職員、学生という異なる立場の人が集う場所です。教育、研究、運営業務を円滑に進めるためには、三者のコミュニケーションが良好に行われる必要があります。ハラスメントのない環境を作るためにも、コミュニケーションは重要です。
現在、当センターでは能力証明コースを3つ設定しています。それぞれの領域から必須の研修、必要な受講時間数等を設け、修了者には認定証を授与しています。詳細はこちらの記事をご確認ください。また、年間の研修計画はこちらのページで公開しています。

6.研修を知ったきっかけ
どうすれば一人でも多くの方に当センターの研修を知っていただけるかは、私たちを悩ます課題の一つとなっています。10年間活動を続ける中で、認知度は徐々に高くなっているようには感じています。所属事務からの通知が一番高いのは意外なのですが、毎年多くの新規参加者がいるのは、そのおかげもあるのかなと考えています。

7.年間実施回数
毎年これだけの研修を実施している大学は、全国でも珍しいと思います。当初の目的は、研修受講文化を根付かせるためでした。10年前、FD研修は進んで受けるというより受けなければいけないもの、と捉える人も多かったと思います。教育に熱心な特定の教員だけが集まる閉鎖的な場にはせず、誰もが気軽に参加し、教育に関する悩みを共有し解決する場、FDをそういう場にしたかったのです。そのため、何度も研修を開催することで身近に感じていただき、研修を受けるということを日常業務の一つと捉えていただくため、これだけの研修を開催しています。
もっと実施回数を増やすことはできるのですが、運営スタッフの数からはこれくらいが限界となっています。

8.利用機関数
おかげさまで、本当に多くの高等教育機関に利用いただいています。コロナ禍以降は遠隔研修も増えましたので、ウェビナーでは全国どこからでもご参加いただくことが可能となりました。

9.参加者数
多くの方にご参加いただいているのはもちろん嬉しいことですが、それ以上に嬉しいのは、学内参加者が大変多いことです。たとえ拠点として学外に開いた活動をしていたとしても、学内から利用されなければ組織としての存在意義はないと考えていますので、本当にありがたい限りです。

10.新規参加者とリピーターの割合
新規参加者とリピーターというのは、誤解を生みかねない表現だったと後悔しています。より適切に表現するのであれば、年度毎の単発参加者(一度きり)と複数回参加者です。毎年これだけの回数を実施していても、複数回参加者の割合は3割程度です。一度出ていただいた方には、二度、三度とご参加いただきたいと考えていますが、それだけ皆さん忙しいのだと思います。

11.キャンセル率
研修に申し込んだものの、何らかの理由により参加できなった方の割合がキャンセル率です。私たち運営側にとって、キャンセルは残念ですが、毎回一定の割合で欠席者が出ています。教職員は多忙ですから、欠席は仕方ないことだと考えています。私たちは繰り返し研修を実施しているので、都合のつくときにまた申し込んでいただければ良いと思っています。7で述べたとおり、気軽に参加して欲しいので、キャンセルしても大丈夫ですよという意味を込めて、このデータを公開しています。

12.スタッフ数
最後に、10年間の活動を一緒に支えてくれたスタッフの数です。最初の6年間、専任教員は私一人でした。その間、当センターの活動が学内で認められ、新しい財源をつけていただくことができました。おかげで教員も事務補助員も増やすことができ、活動の幅がさらに広がりました。
私たちの活動にはそれなりの予算が必要です。大学の予算は厳しい状況が続いており、私たちのセンターも同様です。新たな予算取りを検討しながら、これからも活発に活動を継続していきたいと考えています。

次の10年も、教職員の皆様に支えられながら、皆様の業務に必要な知識や技術の向上を支援できる組織でいられるよう、一生懸命活動してまいります。
